文章系同人誌製作における花形装飾活字とデザインの可能性

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文:織月
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 私は所謂二次創作活動を行なっている、ある意味では印刷にはとても近い立場の人間です。そして薄くてお高いスマート本と称される、所謂二次創作同人誌を製作しております。
 現在マスメディアで取り上げられる事が多い同人誌は、コミックやイラストの物ば かりという認識の方が多いかも知れません。しかしそれ程取り上げられる事はなくとも文章主体の同人誌は存在します。そしてその際ネックになるのが、どうすれば手に取って貰える装丁にするかという事です。
 表紙を絵描きの方にお願いするのは勿論の事、他にはフリー素材を利用して自分なりのデザインを創意工夫する事が大半です。しかしそれだけでは解決しないというのも事実です。
 となると、何処にリソースを傾けるかという話に行き着きます。つまり、本文の装丁を試行錯誤する方向になる訳です。

「ただ文章書いて適当にWordのテンプレートで編集すりゃ良いんでしょ?」
 こういう読み手の何と多い事か! そんな訳はありません。
 内容に合わせてどのフォントを使おうか、段組はどうしようか、どれ位の大きさの 文字なら読みやすくなるだろうか、サイズを大きくして文字の大きさを小さくして一 行辺りの文字数を増やして行間を詰め込んでページ数を節約すべきかエトセトラエト セトラ……。単純に文字を流し込むだけでは済まないです。
 特にWord使用の編集は、縦書の場合思わぬ所に伏兵が居たりします。文字間隔を調 節すると、変な場所にスペースが入ってしまったり、改行しなくてもいい文字数なの に改行されてしまいます。
 更に言えば、大半の同人誌印刷所はWordファイルでの入稿は推奨されていません。 自力でWordドキュメントをPDFに出力してどの印刷所でも印刷可能なPSDに変換する か、縦書版下が作成出来るInDesignやエディカラーを導入する必要があります。短文 ならばIllustratorでアウトライン化した版下にする人も居たりします。更に自力で PDF出力をしても、PSD化をする際に切り抜き&コピペで、思わぬ場所に入ってしまい 字間調節では制御出来ない文字ズレやスペースを修正しなければいけません。

 確かにある程度出来上がったテンプレートに流しこむのは楽ですよ? 特にWordは Windowsならば標準プリインストールアプリである事もあって、印刷所が予め用意し たテンプレート集があります。
 しかしそれでは手に取って下さった方を惹き付けるにはまだ力が弱い。シンプル・ イズ・ベストという選択もありますが、それだけなのも物寂しい。商業印刷に近付け るのも一つの手ではあっても、やはりデザインで自由に遊んでみたい。
 そういった願望を叶えてくれるのが自費出版の醍醐味ですから。その分自分で全て 原稿を版下に加工しなければいけませんが、それもまた楽しいもの。
 パッと思い付く限り、その加工時に利用するのはデザインブラシやデザインフォン トの方が多いと思います。しかし流行りのフォントやブラシという物もあり、これは と思う物が中々無いというのも悩みです。派手に装飾したい訳ではないですが、それ でも自分らしい存在感がある装丁にしたいのです。
 それを全て叶えてくれそうという希望を、私は花形装飾活字に感じました。

「何処が?」と尋ねられたら、一言では言い表せません。
 例えば「花形装飾活字を愛でる その3」に取り上げられている花形装飾活字は、 機種依存文字の†<ダガー>を思わせるフォルムでありながら、フランス王家の紋章 であるフルール・ド・リスの様な丸みを帯びた装飾が施されています。阪口氏は記事の中で、釘付けの様で何処か攻撃的な槍や矢の様だ、と評されています。確かに細身 でシンプルなフォルムなので、より鋭さが目立つのでしょう。
 しかしこうも評されています。美術的な要素として捉えられリスペクトの元で、 イラスト等に使われている場合もあり、 これも勿論リバイバルと言えるし時代性に 合わせた使い方である。しかし単に装飾として捉えた場合に、 その物足りなさは目 に余る物があるが、当時の活字印刷の限界、単色印刷としての限界の袖を踏まえて考えると、どうしても美術的な美しさに目がいく、と。
 仰る通りです。本当にこの記事で取り上げられている花形装飾活字はシンプル。でも私はそこに少しだけ、付け加えさせて頂きたいのです。その鋭さは、小説等の 媒体では場面切り替えの役割にしっくりするのではないかな、と。
 商業媒体での場面切り替えは、●だったり、◆や◇や*を使う事が多いです。それ どころか単に二、三行だけ空けている事もあります。確かに場面が切り替わってるの だなというのは判りますが、使い方に因ってはかなり味気無いと思うのです。  例えば、ロマンスがたっぷりと詰め込まれた恋愛小説。*が使用されていると、花 を表しているのかなと思わなくもないですが、でもそれをつらつらと並べているだけ で内容と同じ様にその華やかさが想像出来るかと考えたら、やはり少し華やかさが足 りないと感じる事が多いのです。それだけに現在が舞台ならともかくとして、中世や ファンタジー的な舞台の場合、それらしい雰囲気を出している装飾活字を使用しても 良いのではないか、と。
 剣や魔法の世界観を持っている作品ならば、アンティーク的な雰囲気を持ったこの 記事で取り上げられている花形装飾活字の鋭さは、世界観を元にモチーフとしても ピッタリだと思います。そして長剣の様だと評される「花形装飾活字を愛でる その 6、その9」で取り上げられている花形装飾活字もまた、同様に場面転換の装飾とし てピッタリだと言える気がするのです。

 章タイトルをそれぞれ装飾するにしても、色々と雰囲気を持ち合わせる事が出来る パターンが考えられると思います。
 商業媒体では大半が章タイトルのみフォントを変える事が大半です。しかしその部 分に関しても、「でも……他に何かより良く出来る事は無いの?」というジレンマが 生じます。
 そんな時、この花形装飾活字なら単にフォントを変える以外の、完成された素材の 枠に章タイトルを入れる様な、画像としての装丁をしなくても良いのではないかと思 いました。一つの文字として組み合わせて、本文内での場面切り替え部分との脳内で のイメージでの大きな齟齬が避けられる気がしたのです。
 本文との統一デザインとしてまずテンプレートを作った後、1ページを丸々使って タイトルと目次を入れ、レストランのメニューの様な効果を出す事も出来れば、ペー ジの頭に小さく枠に見える様に花形装飾活字を配置し、その中に章タイトルを入れる 事も可能だと思いました。ページノンブルの横に配置しても良いかも知れません。ま た「花形装飾活字を愛でる その21、その47」の様に枠を作り、その中に粗筋を 纏めてしまえば、手に取って下さった読み手の方にもアピール出来る物になるでしょ う。更に本文を入れるスペースを少し小さくして、周囲に変形飾り枠として使用する 等の使い方は、市販やフリー素材では一つの完全体として出来上がっている為中々使 いにくい配置でも、この花形装飾活字では一つ一つの文字として成り立っているから こそ使い易くなるのではないか、と。

 私は、それぞれが文字として小さなそれぞれのパーツを自分の感性で配置出来る上 に、配置次第で自分の作品をアピール出来るこの花形装飾活字は、自分で版下を作成する文章系同人誌製作から見れば、とても大きな力強い存在だと感じました。
 美的センスが心許ないという理由で版下作成時に萎縮してしまう作り手は、少なからず存在します。その理由は様々ですが、大きな一つの素材として成り立っている装 飾素材が余りにも多い事と、シンプルで控えめだけれど華やかな存在感が欲しいという需要と一致しない事が大きいと思うのです。
 無論、私も独学ではありますが、ある程度の版下のデザインは自力でします。しかし文章がメインなのに、何故かデザインの方が目立ってしまう素材という物がとても 多く、結局テンプレートを改造して可も無く不可も無くという、汎用的な少し物寂しい版下になる事が多いです。
 だからこそこの花形装飾活字は、その寂しさを埋めるだけでなく、存在を主張し過 ぎず文章を惹き立ててくれる、同人誌製作における文章装丁の一つの可能性を秘めた 存在であるという事を述べる事で、この文章を締めさせて頂きたいと思います。











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